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ヘンルーダ
¥1,760
SOLD OUT
------ 『短編集 ヘンルーダ』 松岡千恵・著 岬書店 2023年4月
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スマートな悪 技術と暴力について
¥1,540
【5/20 読書会で読む本です】 本書は「スマート」とされるAIやスマートフォンなどの科学技術がどのようにして生まれてきたのかを思想史や歴史を辿りながら、現代の日本も視野に入れて考察しています。 日々のニュースではAIの新しい面だけが取り上げられがちですが、第二次大戦やホロコースト、消費社会・管理社会が誕生した歴史のなかで様々な思想家が考えてきたことの中から考察を行っている点が特徴的です。 いまぜひ読んでいただきたい1冊です。 (ルリユール書店) ――――――― いま、あなたの周りには、いったいいくつのスマートデバイスが存在するだろうか。もしかしたら、あなたのポケットにはスマートフォンが入っているかも知れない。あるいはあなたの腕にはスマートウォッチが巻かれているかも知れない。スマートスピーカーで音楽を聴き、スマートペンでメモを取っているかもしれない。あなたの家はスマートロックに守られているかも知れない。そんなあなたはスマートシティに住んでいるかも知れない。 私たちの日常を多くのスマートなものが浸食している。私たちの生活はだんだんと、しかし確実に、全体としてスマート化し始めている。しかし、それはそうであるべきなのだろうか。そのように考えているとき、問われているのは倫理である。本書は、こうしたスマートさの倫理的な含意を考察するものである。 (中略) もちろん、社会がスマート化することによって私たちの生活が便利になるのは事実だろう。それによって、これまで放置されてきた社会課題が解決され、人々の豊かな暮らしが実現されるのなら、それは歓迎されるべきことだ。まずこの点を強調しておこう。 あえて疑問を口にしてみよう。スマートさがそれ自体で望ましいものであるとは限らないのではないか。むしろ、スマートさによってもたらされる不都合な事態、回避されるべき事態、一言で表現するなら、「悪」もまた存在しうるのではないか。そうした悪を覆い隠し、社会全体をスマート化することは、実際にはとても危険なことなのではないか。超スマート社会は本当に人間にとって望ましい世界なのか。その世界は、本当に、人間に対して牙を剥かないのだろうか。 そうした、スマートさが抱えうるネガティブな側面について、つまり「スマートな悪」について分析することが、本書のテーマだ。 (中略) ……本書は一つの「技術の哲学」として議論されることになる。技術の哲学は二〇世紀の半ばから論じられるようになった現代思想の一つの潮流である。本書は、マルティン・ハイデガー、ハンナ・アーレント、ギュンター・アンダース、イヴァン・イリイチなどの思想を手がかりにしながらも、これまで主題的に論じられてこなかった「スマートさ」という概念を検討することで、日本における技術の哲学の議論に新しい論点を導入したいと考えている。(「はじめに」より) 目次 はじめに 第1章 超スマート社会の倫理 第2章 「スマートさ」の定義 第3章 駆り立てる最適化 第4章 アイヒマンのロジスティクス 第5章 良心の最適化 第6章 「機械」への同調 第7章 満員電車の暴力性 第8章 システムの複数性 第9章 「ガジェット」としての生 おわりに (出版社データーベースより) ――――――― 『スマートな悪 技術と暴力について 』 戸谷洋志・著 講談社 2022年3月
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SNSの哲学
¥1,540
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谷川俊太郎 絵本★百貨典
¥4,400
東京で開催中の展覧会「谷川俊太郎 絵本★百貨典」の図録が入荷しました。 これまで刊行された絵本を鮮明な図版と谷川俊太郎のインタビュー、また絵本にまつわるエッセイなど、贅沢に収めています。 図版が鮮明で写真の枚数も多いので、一つの作品がたっぷり味わえます。 24歳で自費出版した写真と詩の『絵本』から、最新作『ここはおうち』まで収録。 なかなか実物を目にすることが少ないものもあり、美術館をゆっくり好きなだけ鑑賞しているような気持ちになれます。 福岡にも巡回してほしい、と切に思う1冊です。 出版社:ブルーシープ 2023年5月
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通勤電車で読む詩集
¥726
『通勤電車で読む詩集』は小池昌代編纂のアンソロジー。宮沢賢治からパウル・ツェラン、高橋睦郎、金時鐘、エミリー・ディキンソンまで多彩なラインナップです。 朝、昼、夜の3部にわかれており、電車に乗っている時間にあわせてあるのも嬉しい。 この本を読んで電車を降りる頃には、心も荷物も少し軽く感じられているから、すごい。 (ルリユール書店) ------ 『通勤電車で読む詩集』 小池昌代編著 NHK出版 2009年に刊行されたロングセラーです。
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アルテリ 15号
¥1,320
橙書店発行 2023年2月 目次は写真2枚目をご覧ください。 渡辺京二さんがアルテリ創刊号に寄せられた「激励」を再掲。ぜひ読んでいただきたい、素晴らしい文章です。
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目に見えぬ詩集
¥2,860
美篶堂の製本職人が一冊ずつ手製本で仕上げています。 本文書体は谷川俊太郎の詩のために、書体設計士の鳥海修によって作られたオリジナルのものが使用されています。 本の隅々まで眺めたくなる、美しい本です。 (ルリユール書店) 谷川俊太郎・詩、沙羅・木版画、美篶堂・編 製本 Book&Design刊 2022年10月
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バラの国の唄がきこえる
¥3,630
ブルガリアで18歳まで育ったアーティスト、ビリャナ・ストレムスカによるブルガリア民謡の世界観を水彩画で描いた美しい本です。 アメリカで長く生活した際に出会った、ブルガリア出身のダンサーや歌手など沢山の人たちからもらったインスピレーションを水彩画で表現しています。 山間に沈む夕日の美しさや、恋人たちの睦みあう姿など、水彩画の色あいに目を奪われます。 ブルガリア民謡から伝えられる、民俗文化の神秘性や精神性を美しい絵と造本で味わえます。 製本は美篶堂による、手製本です。開きやすく、ゆったりと本を楽しめます。 (ルリユール書店) ゆめある舎 2022年3月発行 24×18×0,8cm
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野生のアイリス
¥2,530
2020年にノーベル文学賞を受賞し、その時にはまだ邦訳の無かった詩人ルリーズ・グリュック。 待ち望まれていた彼女の詩の翻訳です。 タイトルは『野生のアイリス』。1992年に刊行された詩集です。 帯に「花と祈り」とありますが、アイリスをはじめ、エンレイソウ、スノードロップ、ユリなど様々な花々が一つ一つの詩となり、「朝の祈り」「夕べの祈り」「子守唄」などいくつもの詩が重なっていきます。 花々をテーマのひとつにしているため親しみやすく、30年前の詩集でありながら、この詩集が最初の翻訳として選ばれたことを嬉しく思いました。 エデンの園と地上の世界との対比が随所に現れますが、キリスト教のみにとらわれずに、読者はその静謐な世界に惹きつけられることと思います。 英語の原詩と対訳になっており、それがさらに何度も繰り返し詩を読みたくさせる詩集になっています。 装幀も美しいです。 (ルリユール書店) ―――――― 『野生のアイリス』 ルイーズ・グリュック著 KADOKAWA 2021年11月3刷
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瞬間
¥1,540
2002年のノーベル文学賞受賞後、初めて発表された詩集。自分自身と世界とを、詩によってつなげ認識する、そしてその詩が美しいという、詩集を読む魅力を感じさせる一冊です。 (ルリユール書店) ------ 『瞬間』 ヴィスワヴァ・シンボルスカ 著 沼野充義 訳 未知谷 2022年
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死者の贈り物
¥1,980
ロングセラー『一日の終わりの詩集』に続く詩集。この詩集『死者の贈り物』は、「いずれも、親しかったものの記憶にささげる詩として書かれた。親しかった場所。親しかった時間。親しかった人。近しかったが相識ることはなかった人。親しかった樹。親しかった猫。親しかった習慣。親しかった思念。親しかった旋律。親しかった書物。」(あとがきより) 「誰もが人生を目的と考える。ところが、/世界は誰にも、人生を手段として投げかえす。/彼女は思う。人生は目的でも、手段でもない。/ここから、そこへゆくまでの、途中にすぎない。」(「ノーウェア。ノーウェア」の一節) 読後にふしぎな明るさをのこす、あたたかな悲しみと静けさと透明な思念にみちた詩篇/無言歌20編。 (出版社より) ------ 『死者の贈り物』 長田弘 みすず書房 2003年
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ゆるめる、巡らせる、温める
¥1,650
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ブータンが教えてくれたこと
¥1,430
SOLD OUT
かわしまさんのブータンへの想いと初めての旅を綴った『ブータンが教えてくれたこと』です。 かわしまさんといえば、身近な草の本を沢山出されていて当店も大好きですが、こちらの旅行記もおすすめです。 ブータンのチモンという村に初めて電気と道路が通ろうとする時のことです。 自給自足の村が大きく変わっていくことが予め分かっているけれど、いまの村の暮らしを知りたい。そんな旅のタイミングだったそうです。 そこで出会った人々から教わったことが綴られ、読み進むにつれて引き込まれていきます。 印象的だったのは、人と火を囲むことの大切さ、それが私たちに思い出させてくれること。 詳しくはぜひ読んでみてください。 時空の大きな流れの中に誘われて、色んな人のことを思い出すような、そんな本です。 (ルリユール書店) ―――――― 『ブータンが教えてくれたこと』 かわしまよう子 文・写真 アノニマ・スタジオ 2013年7月初版
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小原かご
¥1,980
ひとつひとつ丁寧に編み込まれた造形。 使うほどに光沢を増す木かご。 一度手にすれば一生を共にできるという。 この丈夫で美しいかごはどこで生まれたのか。 滋賀・福井県境、淀川源流の碑が建つ奥丹生谷という地域に、かつて七つの村があった。山越えにやってきた木地師たちが住み着いてできたと伝わる村々は、高度経済成長による製炭業の衰退化や、ダム建設計画により1995年までに地図から消えていった。 美しい木かごは、地図から消えた村の人々によって編まれていた。 奥丹生谷の人々は、山桜が咲く頃に麻の種をまき、夏は山桑で蚕を育て、炭を焼き、豪雪に備えてあらゆる山の恵みを蓄え、神々に平穏を祈り暮らした。買うものは釣針などのわずかな鉄製品と塩だけ。そんな暮らしの中で作られた『小原かご』は、カエデなどの広葉樹を材とした美しさと丈夫さが評判を呼び、北國街道を行き交う人々によって広域で流通していた。 本書では『小原かご』について、材料の採取から編み方までを解説。衣食住すべてを作り出す山の暮らしについて、かつての村人の語りや当時の写真と共に伝えている。 文化資源学を研究する著者は、現代で唯一となった小原かご伝承者に師事し、かご編みの技術を習得。ひとり、山へ入り材となるイタヤカエデを切り出し、かごづくり教室を開く。技術の継承者を増やそうと取り組む中で、「かごづくりが続いても、かごが使われていた暮らしの背景を知らずに続くことは『民具の伝承』と言えるのか」という疑問にぶつかる。師の語りに耳を傾け、かつての暮らしを聞き取りながら「民具の伝承とは、技術を継承することだけではなく、そのものが生まれた土地の景色や使われていた暮らしの背景を共に記録し伝えていくことである」という本質に気づく。本書はその実践的アプローチである。 目次 はじめに......2 小原かごのこと......6 白子皇子の民話......8 自然と神々と暮らした村......10 山の暮らしの記憶......12 太々野㓛さんのこと......22 山に入る......30 山の暮らし小話 薬草の知恵......42 小原かごをつくる道具......46 いろいろなかごの形......48 小原かごの特徴......49 小原かごをつくる 材料のこと......50 小原かごをつくる おやつかご......52 山の暮らし小話 山の食事......58 小原かごをつくる ナタかご......62 昔の小原かご......66 山の暮らし小話 暮らしに坐す神......70 現代の暮らしと小原かご......74 山の暮らし小話 すべてをつくり出す暮らし......84 木を編むわざ 広葉樹利用の民俗......88 おわりに......92 前書きなど ----- はじめに ある日、小原かごの作り手である太々野㓛さんのお宅でかごづくりをしていた時、「うさぎっちゅうのは冬が採りやすいんや」と話が始まりました。わたしがせっせと材料を削る傍らで、こんこんと「うさぎの上手な捕まえ方」を語る師匠の太々野さん。わたしはいつか都会で食べた仔うさぎ料理のことを頭に浮かべながら「うさぎって美味しいですよね」と自分ができる精一杯の返事をしたのを覚えています。 小原かごづくりを学び初めて半年経ったころから、かごづくりの最中に聞く話のほとんどはかごのことではありませんでした。冬に囲炉裏の周りに座ってみんなで一年中のわらじを編んだ話や、秋になると栃の実やきのこを採りに行くこと、木を倒すときの大きな“のこぎり”の挽き方。雨や雪の日は箕(み)をまとって何時間も歩いたこと…。油断しているといつの間にかわたしの知らない昔の暮らしの話が始まっていて、その世界の新鮮さに思わず手を止めて話に聞き入ったことも少なくありません。わたしが子どもを産んでかごづくりを中断せざるを得なくなった時期には、昔の暮らしの話だけを聞きに赤子を連れてお邪魔しに行ったほどです。 そのうちに、ほんの数十年前まで、この地域には衣食住の多くを自給自足する生活があったことを知りました。買うものといえば塩と少しの金属くらい。電気や水道は無く、火ときれいな山水を使い、着物も麻から繊維を取り出して布を織って作っていた暮らしです。小原かごとは、そういう暮らしの中の一部だったのです。 わたしは小原かごのことを学びながら聞いた話を資料にまとめるようになり、当時の暮らしを想像しながら、「小原かごを残すということはどういうことなんだろうか」と考えるようになりました。 本書で紹介するのは小原かごのことだけではありません。かごが作られていた村の暮らしや材料を採る山のこと、自然と共存し、常に畏敬の気持ちを寄せてきた信仰のことも一緒に紹介しています。 この丈夫で美しいかごを誰かが手にしたときに、厳しくも豊かな山の暮らしを想像してもらうための一助になれたら、幸いです。現代では考えられないほど大変な暮らしだったでしょうが、その暮らしぶりに触れれば、村人たちのたくましさにきっと勇気づけられるはずです。 ------ 出版社から一言 スマホで何でも簡単に取り寄せられる現代社会において、衣食住すべてをつくりだす暮らしというのは、想像することも難しいかもしれません。でも、日本の山間の村では、たった30年前まで、そうして暮らしていた人たちがいました。本書では、そんな村に伝わる民具「小原かご」を通して、自給自足の暮らしの様子や自然への畏怖を、当時の写真を掲載しながら紹介しています。同じ時代に生きる人々がそんなにもたくましく生きてこられた語りを読み進めるうちに、多くの現代人は経済成長だけではない未来に希望を持ったり、勇気づけられたりすることでしょう。 著者プロフィール 荒井恵梨子 (アライエリコ) (著) 1988年栃木県生まれ。東京芸術大学で工芸技術(金属)を学び、伝統産業のメーカーで商品開発部として勤務後、フリーランスとして様々な仕事を経験。東北の織物産地での仕事をきっかけに金沢大学大学院に進学し文化資源学で修士号を取得。2018年に滋賀県長浜市木之本町に移住後、2019年に「カフェと日用品 コマイテイ」を開店。地域資源の活用を通して、地域に根付く文化を育むことを目指している。2018年から、小原かごの伝承者太々野㓛氏に師事、かごづくりを習い始める。 (出版社より) ------- 『自然と神々と暮らした人びとの民具 小原かご』 荒井恵梨子 能美舎 2023年5月
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耳をすますように 酒井駒子
¥4,180
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世界を文学でどう描けるか
¥2,640
タイトルからして、文学論なのかと思いきや、2000年にサハリン島を旅したことから書き出されます。 北海道の北、かつては樺太と呼ばれた地の南から観光で訪れる人も稀な北端まで旅した日々が綴られています。 政治と歴史と民族と複雑に絡み合い、言葉も文化も異なる地での旅がミステリーのようにも感じられる文体で描かれ、引き込まれていきます。 日本の樺太への植民やロシアとのせめぎ合い、アイヌやウイルタなど様々な民族やユーラシア大陸からの流亡者など、教科書では扱うことのない歴史に触れることもできます。 過去の世界文学にも言及しながら、この旅の経験から文学とは何かを考えていく斬新な作品です。 (ルリユール書店) ――――――— いま、ここにある「世界」とは、何か また、どのようにすれば、それを叙述できるのか―― 2022年春にロシア軍のウクライナ侵攻が始まったとき、思い起こしたのは20年前に訪れたサハリンで出会った人びととの会話だった。アイヌ、ニヴヒ、ウイルタといった北方先住民族たちと、日本人、中国人、朝鮮人、ロシア人などが時代の流れのなかで移り住み、ともに暮らすサハリンで、自らをエミグレ(亡命者/流亡者)といった一人の女性。作家は、サハリンに生きた人びとの姿を通して、この世界をどうすれば描くことができるかという自問と対峙する。 いまなお続く「終わらない戦争」の時代下で、戦火から逃れ、流浪を余儀なくされる人びとがいる。世界の複雑さを直視し、そこに住むひとりひとりの生活を見つめること、想像すること。そこから、かすかではあるが、小さな光明としての、言葉が、文学がたち現れる。 目次 1 私がサハリンに行ったとき 2 ユジノサハリンスク 3 ポロナイスク 4 オハ 5 二〇年後の世界 6 『フランケンシュタイン』は、世界をどう描いたか 7 ヴィノクロフのこと 8 オタスからの世界 (出版社データーベースより) ーーーーーーー 『世界を文学でどう描けるか』 黒川創・著 図書出版みぎわ 2023年3月
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羊たちの沈黙はなぜ続くのか
¥3,300
心理学や認知科学の研究者である著者が現在の民主政治の不全がどのように起こっているのか鋭く分析しています。 ドイツや欧米に焦点を当てた本ですが、様々な点でグローバル経済に飲み込まれている日本社会においても日々感じることが指摘されています。 主なテーマの一つ、選挙に民意が反映されているように思えない状況については代議制民主政治の誕生からその特質を読み解いています。 また、新自由主義の考え方を大衆の頭に染み込ませ自己責任論を当然のことと思わせるメディアや教育に群がる知識人の存在を指摘しています。 以前はネオリベ(新自由主義)という言葉をよく耳にしていたような気がしますが、最近はその言葉を聞くこともなく新自由主義や自己責任論が当然のことのように世の中に染み渡っているのかと背筋が冷たくなります。 講演とインタビューなど章に分かれており、訳文もとても読みやすいです。第一章だけでもぜひ読んでいただきたいです。 (ルリユール書店) ―――――― 新自由主義資本主義が支配するエリート民主政治の行き着く先は、私たちの社会と生活の破壊だ。民主政治と自由。この二つの言葉は、私たちの社会にとって、とてつもなく大きな約束を意味し、その実現のために途方もないエネルギーを解き放つ力を持つ。しかし、かつてこの二つの言葉に込められていた人々の希望は、もはや影も形も残っていない。いったい何があったのだろうか? いまだかつて、この二つの言葉ほど、大きな希望が託されながら、社会にとって惨たらしいことに、本来の意味が骨抜きにされ、改竄され、乱用され、その本来の意味に触発されて考え行動を起こした人々を抑圧するための手段として転用されたものは、ほかにない。 「民主政治」と言いながら、現実の世界では、経済と政治のエリートたちが、選挙という形をとりながら、権力を独占している。そこでは社会の中心をなす経済が民主的なコントロール下で運営されず、また説明責任もない。その結果、我々の生活に直接関わってくる社会組織の大部分が民主政治の手の届かない場所にあるのだ。一方の「自由」は、今ではもっぱら経済的強者の自由を意味するようになった。 オーウェルさながらのこの転意のおかげで、これら二つの言葉は、『歴史に残る誤用単語辞典』のなかでも特別な位置を占めることになった。この二つの言葉がもたらす毒によって、人道的な社会を築き、暴力を抑えるという私たちの文明に対する希望は混乱し、濁り、分解され、集合的記憶からほぼ完全に消し去られてしまった。これら二つの言葉に結びついていた希望が文明社会から失われてしまったために、今の私たちには現行の権力構造に取って代わるべき魅力的で人道的な代替案を政治的に表明するのが難しい。いやそれどころか、それらを考えることすら困難になってしまった。 教育とメディアによる教化が、本当の権力を不可視に、社会を権威主義と全体主義に、民衆を従順な羊たちに変えた人心教化プログラムを解き明かす。新自由主義イデオロギーの本質を明らかにし、沈黙を続ける羊たちに覚醒と自己変革を促す注目のベストセラー。本邦初訳。 目次 序章 第一章 なぜ羊たちは沈黙を続けるのか?--最悪の戦争犯罪とモラルの毀損は、いかにして人々の目と意識から隠されるか? 第二章 権力エリートは民衆を恐れている。--ソフトパワーの手法によるデモクラシー・マネジメント 第三章 新自由主義の洗脳--あるネット新聞とのインタビュー 第四章 「土地を所有するものこそ、その土地を統治すべし」--デモクラシー回避の手段としての代議制デモクラシー 第五章 マスメディアによる洗脳--イェンス・ヴェルニケ(ジャーナリスト)との対話 第六章 「迷う群衆」をいかに自分たちの軌道に乗せ続けるか--公共の議論の場を制限し、異論を排斥する 第七章 中道という幻影--カルテル政党--連邦議会選挙 第八章 人種差別、資本主義、そして「支配者たち」の価値共同体 第九章 デモクラシーと白色拷問--拷問の不可視化への心理学の貢献 参考文献、人名索引 解説 水野和夫 特別寄稿 アーサー・ビナード 前書きなど 過去数十年間に民主政治はかつてないほどに空洞化した。民主政治は「民主政治の幻想」に置き換えられ、自由な公共の議論は世論操作とショックドクトリンに取って変わられ、市民の指導理念は政治的に無感覚・無関心な消費活動に変貌した。選挙はその間、根本的な政治の問題にとって、事実上もはや意味をなさなくなった。重要な政治的決定は、民主的な正当性もなく結果に責任を負うことのない様々な政治・経済グループによって下される。このような形のエリートによる支配がもたらす環境、社会、人間心理への破壊的影響は、ますます我々の社会と生活基盤を脅かしている。著者のライナー・マウスフェルトは、このような教化(インドクトリネーション=強力なイデオロギー洗脳)の仕組みを解き明かし、歴史的底流とともに多方面にわたる心理的洗脳の手法に対して、我々の眼を開いてくれる。 「特に教養層といわれる人々は、自分は知っているという幻想に陥りやすい。この階層こそは、その時代の支配的なイデオロギーの洗脳を最も受けやすい--それは、ナチの時代も今日も同じである。彼らは、彼ら自身の沈黙による容認によって、その時代の支配的なイデオロギーの重要な安定化の要因となっているのだ。」(まえがきより) 版元から一言 新自由主義(ネオリベラリズム)的資本主義はすでに50年前から世界(少なくとも西側世界)を覆っている。自由と民主政治の名の下で格差はかつてないほど広がり、資本は少数のオリガールキたちに握られ、社会と生活は破壊された。新自由主義が権威主義的で全体主義的な経済的・政治的イデオリギーであり、長い時間をかけた研究によって策定されたプログラムによって計画され実行された洗脳と教化による帰結は、少数の巨大資本が民衆を奴隷として支配する中世的社会の再来である。自由も民主的社会も中道政治も、全て概念に過ぎず、幻だ。羊の群れと化した民衆は、未だそれに気づかず、沈黙したままだ。著者は教化の心理的プログラムの仕組みを暴くことで、民衆がどのような方法で沈黙する羊にされていったかについて、緻密な観察と分析を展開している。このような絶望的に破壊的な状況は、羊たちの沈黙がなければ、達成不可能であった。新自由主義の計画は完成間近である。それは、デジタルテクノクラシーと共に完成するデストピアだ。この流れを止めるのは、羊たちの覚醒以外にはありえない。啓蒙思想の根本に返って、時代の流れを批判的に捉え直し、自然の秩序に合った正しい社会のあり方を模索する動きを推し進めることが急務だ。残された時間は少ない。 著者プロフィール ライナー・マウスフェルト (ライナー マウスフェルト) (原著者) 一九四九年生まれ。ドイツ、キール大学名誉教授。知覚と認知心理学が専門。政治・社会問題に関する研究を通じて、新自由主義イデオロギー、デモクラシー(民主政治)の権威主義統制国家制への転換、世論形成とショックドクトリンの心理操作の仕組みなどについての著作多数。講演活動にも注力しており、なかでも『世論とデモクラシーはいかに操作されているか?』と『権力エリートは民衆を恐れている』は数十万人の聴衆を集めた。 (出版社データーベースより) ―――――― 『羊たちの沈黙はなぜ続くのか』(副題:私たちの社会と生活を破壊するエリート民主政治と新自由主義) ライナー・マウスフェルト著 長谷川圭、鄭基成訳 日曜社 2022年11月
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生きることに◯✖️はない
¥2,200
1978年に刊行された本の新装復刊です。 能やきものにまつわる論考などを残した在野の思想家による回想記です。 優しい語り口で大正時代に病弱な幼年時代を過ごした少年がまだゆっくりと流れていた時のなかで快復していく姿が描かれています。 死とどう向き合ってきたのかも、この本のテーマです。 吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』が心に残ったという方にも、同じ時代を感じさせるおすすめの本です。 植田実の装画と挿絵も素晴らしいです。 (ルリユール書店) ―――――― 在野の哲学者である戸井田道三が青少年向けに書いた自伝的エッセイを44年ぶりに復刊。あらたに鷲田清一氏の解説と植田真氏のイラストを加えて生まれ変わりました。母親との死別、結核などの大病、関東大震災での朝鮮人虐殺……と、本書で取り上げられている戸井田の話は決してハッピーな内容ではありません。しかし、そんな辛い経験の中から戸井田は、「わたしが生きてきたのは、生きたというよりむしろ、ただ死ななかっただけなのだ」と思考します。そして、「生きのびているだけで、それが手柄だよ」という恩師の言葉を引き合いに出し、「生きることの意味」について語ります。そんな戸井田の言葉は、現代の若者にもきっと届くでしょう。 目次 自分と他人はとりかえられない 大事な、十四、五歳 最初のハードル 大森海岸でのこと 母の死 チイちゃんのひとこと 小学一年生のころ 母のない子の熱海 「おまえのためにびりだ」 いじめっ子のアブヨシ 田舎にあずけられて 犬を飼えない生活がある 水中に浮く変な感覚 四季のうつりかわり 父の結婚 『立川文庫』におそわって 新しい母 波音のとまる瞬間の深さへ 病気もわるいとはかぎらない 悪い本ときめたがるのは 死の淵からもどった目にうつるものの美しさ 試験は誰のためにある? ゆれる大地、関東大震災 気のすすまぬ転校 流されたうわさ ツネさんの絵 あとがきにかえて 解説(鷲田清一) (出版社データーベースより) ―――――― 『生きることに○×はない』 戸井田 道三(著) 鷲田 清一(解説) 植田 真(イラスト) 新泉社 2022年7月
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小さきものの近代1
¥3,300
『逝きし世の面影』『江戸という幻景』『黒船前夜』『バテレンの世紀』に続く、日本近代素描。鮮かに浮かび上がる、名もなき人びとの壮大な物語。維新革命では、国民ひとりひとりの小さきものの幸・不幸など問題ではなかった。本書では、国家次元のストーリーではなく、近代国民国家建設の過程で支配される人びと=小さき人びとが、その大変動をどう受けとめ、自身の〈近代〉を創り出すために、どのように心を尽くしたかを描く。 (出版社より) ------ 『小さきものの近代1』 渡辺京二 弦書房 2022年7月
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春の城
¥5,060
SOLD OUT
島原の乱を描いた石牟礼道子の長編小説。戦だけでなく、そこまでに至る登場人物たちの穏やかな日常もまた小説の魅力であり、大きな主題であります。原城に籠城してからも力強い筆致で、戦を描き切っています。著者の代表作の一つです。 石牟礼道子 著 出版社:藤原書店
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不知火
¥2,420
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柚木沙弥郎 おじいちゃんと私
¥3,520
2022年に100歳を迎えた染色家の柚木沙弥郎。孫の丸山祐子による、0歳から100歳までの柚木の人生の作品を一歳ずつ写真と文章で紹介する本です。 モノクロームの写真からは100年前の暮らしや戦争中の風景が伝わってきます。 作品や師友たちとの交わり、女子美術大学での教授風景や旅先での写真など、1世紀の豊かな時の流れに連れて行かれるようです。 手のひらに載せた時の重さと、しっかり開くコデックス装が本の世界を演出してくれます。 (ルリユール書店) ―――――― 民藝の枠を越え、アーティストとして老若男女の注目を集める染色家・柚木沙弥郎さん。2022年10月、柚木氏は100歳の誕生日を迎えました。本書は、孫の丸山祐子さんが祖父の記憶、活動、言葉を書きためた「samiroノート」をベースに、101の写真とエピソードを収めたものです。 少年時代、頭上を飛び去ったツェッペリン。「ガリ勉」と呼ばれた、ちょっと思い出したくない黒歴史。戦争に翻弄された学生時代。民藝との出会い。柳宗悦や芹沢銈介との交流。がむしゃらに働いた壮年期……。歴史的な事象や折々の世相を背景に、広く語られてきたエピソードから家族だけが知る日常のひとコマまで、その人生を丹念に紐解きます。 貴重な写真とエピソードで構成された101の見開きは、柚木作品の深遠を垣間見る記録であり、迷いや不安を抱える人の背中を押す物語でもあります。ものをつくること、生きることへの希望にあふれた一冊です。 (出版社データーベースより) ―――――― 『柚木沙弥郎 おじいちゃんと私』 柚木 沙弥郎・丸山 祐子・著 ブルーシープ 2022年12月
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翻訳文学紀行Ⅳ
¥990
世界の様々な言語で書かれた文学作品の中から、どうしても翻訳したい!という気持ちで選ばれた作品たちが収められています。 最新号の4号では、 台湾の近代文学を担った作家による台湾旅行記、 カフカの恋人として知られているミレナのモードや政治の新聞記事、 クック船長とカメハメハの邂逅の描いた演劇(英語とハワイ語)など収録されています。 まだ知らない世界へ、翻訳者という「旅人」が読者を誘います。 文庫本サイズで、各作品が読みやすい長さです。 それぞれの作品が持つ濃厚な世界が鮮烈に感じられます。 (ルリユール書店) ―――――― 『翻訳文学紀行Ⅳ』 ことばのたび社 2022年9月
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翻訳文学紀行Ⅲ
¥990
世界の様々な言語で書かれた文学作品の中から、どうしても翻訳したい!という気持ちで選ばれた作品たちが収められています。 (目次は写真2枚目) 3号では、 ドイツ語文学、イタリア語文学、スウェーデン語文学、中国文学を収録。 まだ知らない世界へ、翻訳者という「旅人」が読者を誘います。 文庫本サイズで、各作品が読みやすい長さです。 それぞれの作品が持つ濃厚な世界が鮮烈に感じられます。 (ルリユール書店) ―――――― 『翻訳文学紀行Ⅲ』 ことばのたび社 2021年9月初版、2022年2月第2刷